冬見がミルクの入っている哺乳瓶を取り出した。

【冬見】 「温度は丁度良いくらいだから、飲ませてご覧なさい」

【紫】 「は、はい……」
緊張しながら赤ん坊を抱えなおし、そっと哺乳瓶の乳首を咥えさせる。

【小羽】 「あ……飲み始めた」

意外に強い力で吸い付いてくる。
哺乳瓶を小さな両手で支える赤ん坊。

【雪子】 「……一所懸命ね」

【冬見】 「そりゃ、生きるためだもの。……はい、この子もあずかって」

冬見が抱いていた子供を雪子に渡す。

【雪子】 「きゃ……お、重っ……」

【冬見】 「その子は力が強いから、落とさないように気をつけてね」

【雪子】 「え、わ、わかってるけどっ……」

四肢を突っ張って雪子の腕から逃れようとする子供。

【雪子】 「あ、危ないからっ……あの、じっとして……」

【小羽】 「貸して、雪子ちゃん」

見かねた小羽が雪子から子供を受け取る。

【小羽】 「大丈夫だからねー、はい、おやすみしましょうねー」

小羽があやすと、暴れていた子供も大人しくなる。

【紫】 「上手なのね」

【小羽】 「……昔、似たような事はやらされてたからね」

大人しくなって寝息を立て始めた子供を小羽は床に敷かれた布団の上に下ろした。

【小羽】 「その子ももう大丈夫じゃないかな」

言われて紫は抱えた赤ん坊に視線を移した。
哺乳瓶の乳首を吐き出し、小さな寝息を立てていた。
ミルクで濡れたほっぺたをそっと拭う。
哺乳瓶を置いて、赤ん坊をゆっくりと揺りかごに戻す。

【紫】 「あっ……」

赤ん坊がしっかりと紫の指を握っていた。
そっと引っ張っても離れない。
仕方なしに、そのまま小さな手を握ってやる。