入院病棟の廊下を進み、『白崎未散』と云う札が掛けられている病室を見つける。

【玲人】 「未散、入るぞ」

……真っ先に眼に飛びこんできたのは、真っ白な素肌だった。

【未散】 「――あ」 こちらを向いた未散。

【玲人】 「あ、わ、悪い――」

踵を返して部屋を出ようとする。

【未散】 「――待って」

【玲人】 「え――?」

未散に呼ばれて足を止める。

【未散】 「……背中届かないから、拭いて」

未散は手拭いをこちらへ差し出してくる。

【玲人】 「……誰か他の人に頼みなさい」

【未散】 「風邪ひくから、早く」

風呂に入ったのだろう、髪も湿っている。
……仕方ないか。

【玲人】 「……あっち向いてろよ」

手拭いを受け取り、背中に回る。
傷ひとつ無い背中――しかし、普段は包帯に隠されている首筋や腕には無数に赤い筋が走っていた。
自傷行為の痕だろう。

【玲人】 「痒いところとかないか?」

背中を拭きながら訊ねる。

【未散】 「……あそこが痒い」

……どこだよ。

髪をかき上げ、首筋も拭う。

【未散】 「んっ……」

【玲人】 「変な声出すな」

【未散】 「ちょっと感じた」

……何を言ってるんだ、こいつは。